used truckのこんな要素

自動車の電子化が進み、機械が急速に頭脳化してくると、各社が独自の機密保持に神経を尖らせるのはわかるが、いくらデンソーにとって本田がだいじなクライアントであるとはいえ、おそらくこれは握造であると信じたい。
それにしても、きびしくてきついと見られているトヨタグループ内でさえ、この類いの話が洩れてくる。
そこはかとない日本流あうんの呼吸が見てとれる。
なんだかんだと言われることが多いけれど、トヨタこそ日本的経営の頂点にいる会社だと思われる。
オールドエコノミーでありながら、いったん事が起こりそうになるとすぐに新しい風を吹かす。
大企業病がはびこりそうになれば、奥田碩のようなスピードのある男をすぐ社長に引っぱり上げる。
トヨタが日産のように順送り人事をしないのは、いちど味わった危機感がその後もずっと継承されているからだ。
それがあるから日本株式会社の中でも、数少ない成功例の砦として残っているのだと考えられる。
「確かにトヨタグループは運命共同体的なところはあるね。
それは日本的な、浪花節みたいな話ですが、例えば。
お前のところは傾いたからすぐクビだ”とか。
事業売却だ”とか、そういうことはトヨタはやらんね。
多分助ける」(日経ビジネス・二〇〇〇年四月十日号)会長の奥田碩がそう語っているのを読めば、やはりトヨタは典型的な日本型企業であるのがよくわかる。
「きびしいけれども、温かい」トヨタをそういう目で見る人がいるが、けっして外れていない。
反対に日産に対しては、「甘いけれども、さいごは冷たい」そういう声が聞こえてくる。
しかし私はこの見方に必ずしも賛同できない。
たしかに日産の官僚体質を指摘された部分には甘さはあったが、けっして冷たい会社とは思わない。
過去をさかのぼれば、関係先や系列ディーラーで、ばっさりと斬り捨てられたケースがいくつもあるにはあった。
だがそれは日産が非情で冷たいから見捨てたのではない。
護送船団の隊列を守りきる力が日産本体に足りなかったからに他ならないと、私はそう見る。
知るかぎり、ひとりひとりの日産マンで冷たくて非情だと思った人に出合ったことはないし、むしろ他社よりも益者三友(正直、誠実、博愛)とよべるような人が多いのではないかとさえ思われる。
人が冷たいのではなく、組織がそうであったのだろう。
親会社は血が通う人事をしているか系列や子会社に対し、本体からまず「人」を送りこむ、というのを四十年も続けたのが日産の伝統的なやり方であった。
資本の論理からいってそれは間違いではないし、一般的にみてもすこぶる日本的慣行といってよいだろう。
多くの企業で恒常的にやっている。
まして天下りの新社長が、親会社から新規の仕事を手土産にして着任するとなれば、それを歓迎しない系列があるわけはない。
例えば日産ディーゼル工業、日産車体、愛知機械といった日産グループ各社の歴史がそれを物語っている。
バブル崩壊以前には、日産には系列に手伝ってもらわないと困るだけの仕事があった。
マイクロバスは日産車体に、小型トラックは日産ディーゼルにと、それぞれ委託生産して乗り切ってきた。
ある時期には、外様ながらも四・三%の株式を保有していた富士重工へも小型乗用車の組み立てを委託していた。
しかし表でもわかるように、日産の国内における生産のピークは一九八〇年の二六四万四〇〇〇台である。
そのあと二十年余り今日まで、ほぼタラタラ坂を下っている。
途中でシーマ現象の風が吹いたこともあったが、それでも下り坂のブレーキは効き目がなかった。
トヨタが八〇年から急に上り坂で加速しているのに対し、日産は逆に下かっている。
これを見てわかることは、日産が自社の雇用を維持しようとすれば、当然のこととして外へ委託している仕事を奪い返さざるを得なくなったということだ。
「手ぶらで来るような社長なら、もう来ていただかなくて結構」どこの誰とは言わないが、これはバブル崩壊後、私か日産系列でしばしば耳にした話である。
この言葉の中には親会社に対する反発感情が多分にあるだろう。
それ自体がいかにも日本的ともとれる。
アンチ親会社というのは日産に限った話ではなく、わが国では当たり前のようにどこでも見られる光景である。
だからといって、これを軽く聞き流してはいけないだろう。
まして「子のくせに、親にむかって文句があるか」といわんばかり、力でねじ伏せるなどは禁物だろう。
入れ替わり立ち替わり、一定の期間が過ぎれば一方的に新社長が親会社から送りこまれてくる。
それが恒常的に数十年間も繰り返されて、受け入れる側に不満や甘えが芽生えなかったらよほどおかしい。
プロパーの人間がいかに頑張っても専務どまり、副社長はメイン銀行から、社長は親会社からというふうに、たとえ不文律ではあっても特等席を奪われてしまえばどうなるか。
グループの一角から夕方が緩み、それがしだいに全体へと波及し、緊張感はもちろん責任感すら持たない集団になってくるのは請け合いである。
まるで高級官僚社会のように順送り人事、指定席あてがいぶち人事を民間が当然のことのようにやって、それで活力を出させようというのは虫がよすぎはしまいか。
「そうは言うが、プロパーで社長になれるだけの器がいるのか」そういう反論もあるだろう。
だが、もしふさわしい人材がいないとしたら、それは育てなかった親のほうに責任がある。
一般論としてもっときつく言えば、住民票だけは子会社へ移したけれど、本籍は親会社に残しているような言動をする社長ではかなわない。
それでは駐留軍となんら変わらない。
さすがに日産ではあり得ないが、親と子が壮絶なパドルを演じたのを私は運送業界で見たことがある。
その結果はグループ全体の人心が乱れてしまい、みずから体力を消耗しただけで終わった。
トヨタと日産-どちらが凶とでるか、吉とでるかトヨタこそ日本株式会社の代表ではないかと先に書いた。
トヨタの三河軍団は日産のそれと比べても、けっしてひけをとらないくらい日本的集団ではないかと思われるいくつかの理由がある。
例えばトヨタには「軍団の運命は一つだ。
死ぬときはみな一緒だ」というくらい、互いの絆の強さが見てとれる。
それだけではなく各社のカラーも同一色にしか見えない。
いったいそれはなぜだろう。
やはり豊田家の存在を無視できないからかもしれない。
各家老が領主に血判を押している場面さえ想像できるような一面がある。
ところがトヨタは反面、系列企業の経営に関しては、いちいち嘴をさし挟んだり、箸の上げ下ろしまで節介を焼くようなところが全く見られない。
それは系列の自主性を尊重しているのか、見て見ぬふりをしているのか、デンソーと本田の親密な取引の一件からはどちらともとれる。
なにしろトヨタの本田嫌いは業界で知らないものはいない。
デンソーは本田以外のメーカーにも積極的に取引の幅を広げている。
もちろんトヨタあってこそのデンソーという基本姿勢が揺らぐわけではない。
それが証拠に、ようやくというか、九九年六月の定時株主総会において、トヨタ本体からはじめてデンソーの副会長職として大幹部が送られた。
驚くことに、それまでデンソーにはトヨタから一人として常勤役員が派遣されていなかったのである。

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